2009年12月19日土曜日

ゴルフ修行inゴールドコースト

先週は一週間休暇を頂いて、オーストラリアはゴールドコーストへと行ってきた。目的はもっぱらゴルフ修行。今シーズン不甲斐ない成績で終わっていたことから、来シーズンに向けて、「何かを得たい」という気持ちが強く、思い切ってオーストラリアのゴルフスクールへ短期で入ってみることにしたのだった。この時期、南半球のオーストラリアは現在真夏のハイシーズン。ブリズベン空港から南に1時間車を走らせたサーファーズパラダイスにはサーファーや観光客で賑わっている。しかし、自分はこのサーファーズパラダイスを素通り。そのままもう少し南へと車を走らせ、海岸から15分内陸のVarsityLakeのアパートへと向かった。到着してみると、これが素晴らしく広々としたアパート。洗濯機と乾燥機が完備されている他、リビングには大型テレビとステレオが。そして素晴らしく大きいキッチン!

翌朝早速ゴルフ場に車を走らせ、スクールに顔を出すと、ティーチングプロのオーストラリアの女子プロAnnと面会。Annは現役時代はオーストラリアのツアープロでありプレーヤーとして非常にレベルが高いだけでなく、シンガポールのナショナルチームのコーチを行うなど、ティーチングプロとしての経験も豊富だ。実際Annは素晴らしいグリップとバックスイングをしていて、Annのスイングを見ているだけで勉強になることが多かった。

最初に簡単なオリエンテーションを済ませると早速「仕事」に取りかかった。まずは軽くストレッチをして、それから球を打ち始めてウォームアップ。20分ぐらいボールを打つと今度はスイングをビデオにとって、オフィスの中へ。パソコンをつかってスイング解析を行った。これまでも自分のスイングをビデオにとったことは何度もあるが、しかしいつみても「がっかり」するものである(笑)。しかしこうしてビデオを見ながら、何を直さなければならないかをAnn話し合った結果、「まずはバックスイングを直そう」ということで合意した。ビデオにとってみると明らかであるが、自分のバックスイングはスイングプレーンを外れてインサイドに引き過ぎていたのである。その結果ダウンスイングで手首のローリングを使ってフェースをインパクトで合わせる動きが癖になっていた。「なんて酷いフェースの使い方なの!」思わずAnnものけぞった。「こんなに位置からクラブフェースを最後に合わせていけるなんて、あなた凄い運動神経があるわ。でもこれではいつかミスが出てしまう。まずはバックスイングでの手の使い方をマスターしましょう」。そうして、そこからは、Annが組んだメニューに従って、まずはスイングプレーン矯正器具を使って軌道の確認を行って、その後15分ボールを打ち、今度は鏡でバックスイングの軌道を確認。そしたらまた矯正器具に戻って練習、このルーティンを徹底的に繰り返すことにした。

実は自分は今シーズン時々「シャンク」というミスに悩まされていた。シャンクとはクラブフェースが極端に開いて入って来て、場合によってはクラブのネックの当たりにあたってボールが真横に飛んでしまうという、とんでもないミスである(笑)。しかし実はこのミスはプロでも出ることがあるもので、あのタイガーウッズでさえ試合でシャンクのミスをしたことがある。自分もかつてシャンクが出た事があったが、しかし最近はそれが試合でもよく出て困っていた。試合でシャンクが出てると、一気にスコアを崩してしまうため、シャンクの克服が一番の課題だったのである。そこで自分なりにいろいろ考えてみたが、クラブが開いてくるということで、最初からクラブフェースを閉じて上げようとして、徐々にインサイドに上げるようになっていったのだが、実はこれが全くの逆効果!で、これによって、ダウンスイングで右手が下から入り易い状態をつくってしまっており、実はこれが原因でシャンクが出ていたのだ!今回Annのアドバイスでスイングを変えてみて、この事がはじめて分かった!実際、先週は3回のラウンドをしたが、シャンクは一度も出ずに済んだのである。

このようにして、スイングの矯正と、それ以外にグリーン周りのショートゲームの練習をして、初日はあっという間に過ぎたが、目から鱗の手応えの大きい一日であった。

さて、だいたい17時頃に練習を終えると、そこからのパターンはもうだいたい決まっていた。何しろ、真夏のオーストラリアの日差しを受けて、35度の気温の中での活動で、17時にもなるとへとへと。スーパーによって、食材を買い出し、家に帰ってビールを飲んで夕飯を食べてすぐに寝てしまう、の繰り返しだ。しかし、本当に暑いので、身体を冷やす必要がある、ということで、とにかくスーパーにいくと、トマトやキュウリなどの夏野菜を多く買い込み、これらを食べただけでなく、日焼けの酷いところには、きゅうりの輪切りを貼った(笑)。あとは、毎日大きなキッチンをゆったり使って久しぶりのヨーロピアン料理を楽しんだ。

買い出しは近所のとてつもなく大きいショッピングモール、Robina Town Centreに行く事が多かったが、オーストラリアはさすが食料自給率200%だけあり、食材は非常に豊富だ。陳列棚の間を歩くのが非常に楽しい。折角なので、日本ではあまり食べられないものを食べようということで、野菜ではクルジェット(ズッキーニ)などを買ってみた(左はクルジェットのパスタカルボナーラ)。それ以外は、やっぱりオーストラリアは肉が美味しいので、まあ、毎日カロリー消費は多いのでいいだろう、ということで、殆ど毎日肉を食べていたが、とくに子羊が大変美味であった。子羊は保温効果があるので、本当は熱射病になりそうなときに食べるのはよくないのであるが、その味にあっさり負けて、何晩か子羊を楽しんだ。ローズマリーのハーブとの相性が何しろ抜群である。

さて、こんな感じで毎日が過ぎて行き、朝は6時に起床。朝食を食べてカフェオレを飲み、昼の弁当を作って、8時にはゴルフ場へ。昼の弁当をつくっていくというのが、オランダ時代の社交ダンスの試合を思い出させて懐かしい感じがした。そして、17時まで練習とコースのラウンドをして暑さと疲れでバテバテになって、家にたどり着いたら、ビール一杯飲んでから、料理に取りかかる。こんな様子で殆どゴルフ一色。おまけに丁度行った週がAustralian Open ChampionshipとAustralian PGA Championshipの週に挟まれていたこともあり、テレビでもゴルフをよく見ていた。

このゴルフスクールには自分以外にも15名ぐらいの人がいて、殆どが1年単位で滞在している(中にはプロを目指している人もいる)。国籍は圧倒的に韓国が多い。最近の韓国は女子プロの世界的躍進が凄いだけでなく、男子でも昨年はタイガーを一騎打ちでやぶったY.E. Yangが国民的スターになっている程。国民的ゴルフ熱が高い。それ以外にもイギリス人のRay。彼とは2度一緒にラウンドしたが、彼は190cmの長身でゴルフの母国イギリスのシングルハンデ。オーストラリアの海岸沿いの強風の中でも、ノックダウンショットで低く球をコントロールする技術に優れており、最終日のコンペでは3ホール連続バーディのおまけ付きで36-34の通算2アンダーで周り、優勝を飾った。しかし何より驚いたのが、彼の本職がblacksmith(鍛冶屋 or 馬の蹄鉄打ち)であったことだ!それ以外には、タイ出身のタード。タイに帰ったら何するの?と聞いてみると、「ゴルフ」と返って来た(笑)。27歳の彼は家が大変裕福らしく(封建領主のような家なのだろう)、生まれてこのかた仕事をしたことがないとか。こういう人に会うと、改めて「働く意味」ということを考えさせられる。自分は仮にお金に困ってなくても仕事をしたいと思うだろう、それは仕事を通じて得られるものが大きいからだ。しかしまた逆に考えてみると、仕事ができる環境にあるのであれば、お金のために働くというのでは、あまりにも惜しい、ということだ。

このように実はゴルフだけでなく、いろんな人との出会いもあり、なかなか得る物が多い一週間となった。ちなみにオーストラリアについては、今回で訪問するのが、4回目。最初は高校生の時に奨学金を頂いてシドニー大学に2週間滞在。その後は、ケアンズでダイビングをして、2年前には仕事でメルボルンへ。ゴールドコーストは今回が初めてであったが、今回の印象としては、かなり「バブル」な印象であった。確かにオーストラリアは資源国で、原発に不可欠なウランの埋蔵量も世界屈指で豊富。今後も期待される新興国の経済成長に伴う資源需要で潤うのは間違いないだろう。しかし感覚的には、人口に対して、住宅が立ち過ぎの感あり。人口で言うとオーストラリア全土でも2200万人、Queensland州では400万人だ。その割に新興住宅地が非常に多く発生している。ぱっと見供給過剰であり、今後の不動産バブルが気になる。

それ以外に今回思ったのは、タイ出身のタードのように、世界にはうなる程お金を持っていて、使い道に困っているという人が大勢いる、ということだ。勿論、20世紀に最もお金持ちとなったのはアメリカの一部の人達であったが、タイなどの東南アジアや、中東のオイルマネー、ロシアの資源マネー、それ以外の地域でも、勿論日本を含めてとにかく使い道に困る程お金をもっている人はどこの国にも大勢いるものである。オーストラリアのゴールドコーストという土地が、そういう人達を惹き付けているのは間違いないだろう。何が要因かといえば、大きなものはやはり環境だろうと思う。海と太陽があって、人が少ない。そして英語が通じる!とにかくこういう人達を相手に商売ができる、というのは楽だ(笑)。

一方でふっと思ったのは、ちょっと飛躍しているが、世界中で皆が英語で話すようになったら、なんてつまんない世の中になるのだろうか、ということだ。特にオーストラリアがアメリカと同じく(アボリジニーは別として)移民が始まってからの歴史が浅くカルチャーに乏しいせいもあったかも知れない。英語以外の言語にももっと親しむようにしたいと何故か思った一週間であった。