2010年5月30日日曜日

サロンdeリオ:食で人と交わる(餃子)

先日潮干狩りに誘ってくれたI氏ご夫妻や、同じみの金融マンK氏、それから初登場の外資系企業勤務のE女史、そして翌日から2週間のインドパキスタンの旅に出る直前のジャーナリストT氏等に集まって頂き、サロンを開催。今回のテーマは、今一番元気のある国が中国、ということで、「中華」をテーマに、その食の奥深さを味わい、不老長寿を求める中華料理のフルコースと行きたいところではあったが、結局、餃子と、持ち寄って頂いた杏仁豆腐と、最後のジャスミン茶以外は、中華らしいものはテーブルには殆ど登場しなかったと言ってよい(笑)。しかし、食で人と交わると書く、この餃子。皆で話をしながら、せっせと包む作業が何ともQuality Timeにはうってつけではないか。中国でも、餃子の時間と言えば、家族団欒の時間になると言う。今回も、餃子を包みながらの会話で、初対面同士もすっかり打ち解けた雰囲気になったようだ。

ちなみに、中国で餃子と言えば、水餃子か蒸し餃子であって、焼き餃子はない。
従って、今回も本場に倣って、水餃子と蒸し餃子はあっても、焼きはなし。餡には、豚バラをメインとした2種類と、エビとアオリイカの計4種類の味を楽しんだ。日本では餃子と言えば、焼き餃子であることと同じぐらい当たり前の事として、豚の挽肉を使うのが一般的であるが、中国では豚バラなどを刻んで使うことが多いのだとか。今回初めてそれをトライしてみた。出来はまあまあだったと思うが、皮から作っているので、もちもちっとした食感が何と言っても一番で、中国で食べた餃子の食感を懐かしく思い出したものである。また、日本では、餃子と言えば、醤油に米酢に辣油が定番であるが、今回は中国式に黒酢で食してみた。黒酢は日本では江戸時代以来200年以上もの間、鹿児島県でよく作られていて、これは最近よく知られているように、健康食材でもある。

さて、今回は自分が最近、株式会社ワークライフバランスの小室淑恵さんの講演を聞いた直後ということもあり、「ワークライフバランス」について話が及んだ。小室さんの主張を簡単にまとめると、まず「ライフ」の概念の中には、当然ながら、「家族」や「パートナー」との時間や趣味の時間の他に、「学び」の時間や「ボランティア」なども含まれる、ということ。趣味を楽しむだけがワークライフバランスではない、ということだ。何故、それが必要なのか、というと、個人にとっては、健康や人生の豊かさが増すだけでなく、実は、そうやって社外でいろんな活動をすることが、仕事においても社会の動きにマッチした創意工夫を生み出す余地が生まれ易い、ということで、これは間違いなく正論である、と自分も思う。一方、企業側にとってみれば、供給過剰の現在の市場環境において、そのように創造的な仕事ができる人材の必要性は論をまたないし、短時間で生産的な働きをしてくれた方が、「コスト減」に
なることも間違いない。更に実は、日本政府としても、サラリーマンのワークライフバランスは実は重要だ、とも言う。それは、少子高齢化が進む今、年金の財源確保が大きな課題となっていて、子ども手当などの政策で出生率向上をはかろうとの動きもあるが、今出生率が上がっても、20年はその効果が顕在化しない。一方、女性の社会進出推進で女性を労働市場に呼び込む方が圧倒的に時間的アドバンテージがあるからだ。しかし、それを実現するには、男性の側も会社人間ではうまくいかない。このようにワークライフバランスの必要性を、個人と企業と社会の面から説こうとするところが、小室さんのプレゼン力をよく示している。

さて、最後メインには、築地で仕入れて来た「いさき」を中華風の蒸し焼きにしようと考えていたが、刺身がよいとの声が多く、前菜っぽいものになってしまった。しかし、香草(コリアンダー)との食べ合わせが非常によく、これは思わぬ発見であった!


2010年5月5日水曜日

勝浦の初かつお

GWの一日を利用して、今が旬の初かつおを食しに勝浦まで行って来た。勝浦といえば、初かつおの水揚げ日本一を誇る港町。400年の歴史をもつ朝市は、能登の輪島、岐阜高山と並び、日本の三大朝市に数えられる。

勝浦は人口2万人の小さな街であるが、昔は江戸との交易で栄えた港町だ。到着してみると朝市周辺には首都圏のあちこちからの車が密集しており、かつおを丸ごと一本氷詰めにして持ち帰るお客さんで賑わっている。


自分はマーケットに行くのが好きで、ヨーロッパに居た時にも機会があればあちこちのマーケットを見て来た。マーケットは雰囲気に活気があって、数々の商品が並ぶ通りを歩くのは、それだけで楽しいし、また、その場で買い食いができてしまうのも魅力だ。また、そこで売っている食材を見ると、同じヨーロッパでもその土地固有の食文化が見えてくることもあり、食全般について学ぶいい機会にもなる。

今回行った勝浦の朝市は、駅から歩いて10分弱の場所にある、海岸近くの魚市場近くの通りがそれにあたり、だいたい300mぐらいの長さだ。この時期主役の初かつおの他、新鮮な魚介類や干物のお店にくわえて、地元でとれた筍や八頭などの野菜のお店、海苔やワカメ、塩辛、鰹節、など目移りしそうなお店が建ち並ぶこの通りは熱気活気があるだけでなく、地元の暮らしの様子も見えて来てとても面白い。それに、もちろん値段も東京に比べると格安で、ついついあれもこれも買いたくなってしまう。

今回かつおは、朝市のお店でお刺身で頂くことができた。初かつおは、味も美味しいが、香りがさわやかだ。この時期、勝浦ではお刺身の他に、なめろう、まご茶、角煮、などいろんなかつお料理を食している。勝浦では、6月5日に「かつお祭り」があるという。ここではきっともっとたくさんの勝浦のかつお文化に触れることができるだろう。

お土産には、電車だったこともあり、かつお丸ごと一本は断念したが、干物や筍などを持ち帰って、早速うちで筍ごはんにしてみて春の味覚を楽しんだ。しかし、早朝にここでかつお一本買ってくれば、これだけで十分サロンdeリオができてしまう!そんなサロンdeリオをいつかやってみたいなあと思った。

この時期の房総は新緑がきれいで、山にはホトトギスがよく鳴いていた。

「目には青葉、山ほととぎす、初鰹」(山口素堂)


2010年5月2日日曜日

サロンdeリオ:L.A. Miracle

久しぶりのサロンdeリオを先週末に急遽開催。今回のメンバーは、常連の政策秘書H氏、国際金融マンのK氏、以前も参加頂いていて、最近ロシア担当から有名小説家担当に変更となったジャーナリストのK女史。それからK氏のロシア人脈で自分もモスクワでお会いしていたM女史、元ロシア語専攻のM女史と、ロシア語が第二外国語のN女史。ということで、図らずもロシアに多かれ少なかれ関心のあるメンバーが揃った。

料理の方はつまみがオランダチーズと今が旬の空豆。プリモは、春キャベツを使ったリゾット。リゾットは出汁がポイントとなるが、これは鶏ガラをつかってスープを取っておいた。メインは、(自称)「モロッコ風チキン(a la salon de rio)」。鶏のもも肉を、コリアンダー、クミン、など各種スパイスをまぶしてワインでつけ込んで、それをハーブ、オニオン、ガーリック、ペッパーを入れて、トマトで煮込んだもの。スパイスとトマト煮込みによるインパクトのある風味がエキゾチックなモロッコ風。ちなみに、私はモロッコには行った事がない。
しかし、実際モロッコにいけば必ずやこのようなテーストのチキン料理があると信じている(笑)。それとM女史からは、吉祥寺のカフェロシアのピロシキを差し入れとして頂いた。「ピロシキ」は、日本では揚げパンであることが多いが、正式なピロシキは揚げでも、焼きでもどちらでもよい(ロシアでは圧倒的に焼きが主流)。ピロシキは、複数形の言い方で、本当は、「ピラジョーク」というが、パンの中に具が入っているものがピラジョークとなる。しかし、具が入っていれば何でもよいのではなく、正式には、この「形」をしたものがピラジョークなのであり、他の形をした具入りのパンは、別の名前で呼ばれることになっているのである。従って、この写真のピラジョークこそが本当のピラジョークである。勿論味も最高によかった。

それと、デザートには、お菓子づくりの造詣が深いN女史が、SEIJO ALPESのシュークリームを届けて頂き、皆でご馳走になった他、M女史K女史からもいちごを頂き、皆で美味しく頂いた。

さて、今回久しぶりにサロンを開催して楽しい仲間にお集り頂くことができたが、実はその前の週から1週間休暇でロサンゼルスに行っており、この滞在で大きなインスピレーションを得たことが急な呼びかけのきっかけであった。仕事では何度も行った事のあるロサンゼルス。この中心のない広大なスプロール式郊外をいくつものレーンが並ぶフリーウェイで繋ぐ巨大な消費地の集まりが、自分に特別な意味をもったことは、残念ながら、これまでにない。それがわざわざ休暇をとってまで行く事にした理由は、例えばユニバーサルスタジオに行きたかったからではない。Georgetown大学時代の友人の結婚式に招待されたからである。

こうして、先々週の半ばより直行便にのってロサンゼルスに向かい、1週間のロサンゼルス滞在となった。しかし、結婚式に出る以外は、自分にとっては、ハリウッドもディズニーランドも、ショッピングも、正直なところ特段「ワクワク」させるものではない。空港につくや否や、Hertzで車をレンタカーし、フリーウェイをひた走って、何も見る事なくロサンゼルスの街から出てしまった。そして2時間以上車を南東に走らせて向かったのは、フォールブルックにある田舎のオーガニックファームである。

実は、7年頃前に自分は企業のブランド戦略の延長線上と貧困問題への関心からCSRに興味を持ち始めていた。今では信じ難いことであるが、当時新宿の紀伊国屋書店には、CSR関連の書籍はたったの2冊しかなく、そのうちの1冊が「企業評価の新しいモノサシ」だった。今回は、その本の著者でコンサルタントである斎藤槙さんを訪ねるために、このオーガニックファームまで出向いたのである。斎藤槙さんとは、この本をきっかけに、いつからかメールでいろいろアドバイスを頂けるようになった。当時まだ若く、目の前の現実とありたい理想のギャップを埋めようと懸命にもがいていた自分には、現実に押しつぶされずに活き活きと理想を語って仕事をしている斎藤さんとの遣り取りがいつも大きな励ましとなっていたのである。今では、自分のCSRへの考え方も、随分大きく変わってしまった。しかし、この7年間、自分が飛躍できた部分があったとすれば、その大きな原動力の一つは、斎藤さんとの遣り取りから生まれていたと言っていい。その意味で、斎藤さんは自分にとっての恩人である。そのお礼を一言お伝えしたい。そのような思いでフリーウェイをひたすら走り、丘陵地帯
を越えてこの農場についてみると、ちょうど娘さんを近くの幼稚園まで迎えにいって帰って来た斎藤槙さんと7年後にして初めての対面となった。斎藤槙さんは、思っていたよりも、小柄で華奢な女性だった。しかし、想像以上に、元気で明るく、そして心が真っすぐで全く壁を感じさせないオープンな素晴らしい方で、そして本当にアメリカ人のような英語を話す方であった。

さて、この農場、15エーカーの広大な土地で、ワシントン州出身のアンドレアさんが経営するもの。辺り一面自然いっぱいであり、夜にはコヨーテが出没したり、ガラガラヘビも出るという。この土地で、無農薬栽培のオーガニック野菜や果物を出荷して生計を立てている。斎藤槙さんの案内で、農場の桑の実をつまみ、レタスをちぎって食べ、いちごを鱈腹頂いた。新鮮な野菜や果物は本当に美味しい。そして、ここでは養蜂も行っており、本当の100%蜂蜜もここで頂くことができた。毎日、こんなに新鮮な野菜と蜂蜜が食べられるのかと思うと、ここはもう、それだけで自分にとっては、パラダイスも同然であった。さて、夕飯は斎藤槙さん家族と自分、それからもう一人のゲストで、この辺りの不動産を買うために物件を下見に来たペンシルバニア州で水ビジネス会社を経営するアメリカ人の社長さん、それからアンドレアさんのお孫さん達でテーブルを囲むこととなった。大きなキッチンを前に、まさか黙って椅子に座って待っているなどできる筈がなく、自分もキッチンに立って、農場でとれたブロッコリーをつかって、パスタ料理をつくった。

夕飯の食卓、そしてその後も、夜にいちごをたっぷり乗せたアイスクリームを食べながら、そして翌朝の朝食のテーブルでも、もう一人のゲスト、そしてアンドレアさんを含め、この一泊二日の間に、いろんな話をすることとなったが、話題は子供の教育から、食と農業、アメリカの政治、など多岐にわたり、このような体験から受けた刺激が非常に大きなものであったことは、もはや説明不要かと思う。自分は、このような体験を通じて、そして特に斎藤槙さんからも前向きな感想を頂いたこともあり、サロンをもっと頻繁に開催しよう、そして皆と楽しい時間を過ごし、その中で、日本の政治経済や豊かさに関する自らのビジョンや面白いアイディア、それを多くの人に語り、そして周りの意見に耳を傾けよう、そう決めて日本に帰ったのである。このような刺激を受けて帰った後の自分は、まさに豹変したといってよい。目的意識がつよくなったからだろう。生活ががらりと変わった。早朝に起きて毎朝ジョギングをし、朝も夜も自炊の頻度が圧倒的に増え、今まで以上に本や新聞をよく読み、ものを考えるようになった。まさにロサンゼルスの1週間の奇跡である。

というわけで、ここで得たエネルギーをばねに、これからも美味しい食事を楽しみながら、新しいつながり、そして楽しい会話の生まれる会をもっともっと開催していきたいものである。