2010年10月4日月曜日

そして上海万博へ。


「さて、今日は何しようか」。

例によって朝食のコーヒーも二杯目に突入した頃、漸くこの日の予定について話すことになったのは、前日の発見について一通りの解釈を終えたあとであった。

「やっぱり中国人のというか、上海人のお金に対する信仰には思った以上のものがある」。

そう友人が言いながら、前日の預園での出来事を振り返る。預園は、1559年に四川省の役人によって造園が開始された2万平米にもなる広大な庭園で、明・清時代の江南式建築を現代に伝える見事な庭園だ。我々は、外灘周辺を歩いた後、タクシーに乗り込んで、このいつ行っても観光客でごった返している有名な観光地へ飛び込んでいったのであった。

「だってさあ、あの沈香閣での線香、皆黄色のやつを選んでたんだぜ。ピンクの方は俺以外には、殆ど選んでる人を見なかったよ」。

確かに黄色い線香で拝んでいる人を多く見かけた。沈香閣は預園エリアにある清代に建てられた廟だ。ここには、2種類の線香(といっても、巨大なものであるが)がおいてあり、購入できるようになっている。参拝者は、これを購入して、火をつけてお祈りをする習慣があるようだが、ピンクの線香は幸運一般、黄色い線香は、蓄財の意味がある、との説明があった。

「これだけお金儲けに皆がどん欲というのは、経済発展にとっては、いいに違いない。やっぱり中国は買いだよ」。

相変わらず続く、この中国が売りか買いかの会話。しかし、その後本当に大量に買い込むこととなったのは、預園の敷地内にある有名なティーハウス、湖心亭で飲んだのがあまりに香りがよく感心した、中国茶であった。

湖心亭は、預園の敷地の池の真ん中に浮かぶティーハウスで、エリザベス女王も訪れた事のあるところ。ここでヨーロッパ人2人を連れて観光していた日本人女性が声をかけてくれて教えて頂いたお茶が非常に美味しかった。

「しかし、あのお茶を教えてくれた人は、万博に3日間も通うって言ってたね。すごいよね」。

我々はこの時期に上海に行く事にしていたものの、万博に行く確実な予定は特段なく、通常なら万博チケット付きのツアーで日本から行く人も多い筈だったが、我々は当然ながらチケットはなし。もちろん、出発前に「上海にいくんだ」「あ、万博いくの?」という会話は少なく数えても、10回ぐらいはしていたと思う。「いや、多分いかない」という反応に「え?いかないの?」と皆一様に驚くものの、「でも、丸一日つぶして万博行きたいと思う?」と聞き直すと、「そうは必ずしも思わないけど、話のネタにはなるよね」、という返答がよく返ってきたものだった。ま、その程度の思いしかなかった我々からすると、三日間もかけて万博を回ろうというこの観光客がにわかに信じがたい気持ちになっていたのである。

「今日は何しようかね?」

「その前にさあ、あと残り3日間の予定の全体イメージを考えようよ」。

「え、もうあと3日?」

「だって、昨日は外灘と預園と新天地にいって、今日なわけでしょう?そしたらあと3日だよ」。

「そうかあ、もうあと3日かあ」。

全体で4日間しかない割には、あと3日というのがえらく短く感じる。

「そうだねえ。上海は昨日一通り見た感じがするしねえ。この後は、やっぱり一日は上海の郊外の蘇州あたりにでも足を伸ばすとして、一日はやっぱり金融機関を訪ねていろいろ調べてみたい。となると残りはあと一日だなあ」。

「一日はお土産を探すのにちょっとだけ買い物がしたいなあ」。

「そうなってくると、万博は、、、、やっぱり無理かあ。とりあえず、今日は郊外にいかないか?」。

「そうだなあ。でも郊外に出るなら、朝早く行った方がいいんじゃないか。今日はもう、、、11時だよ」。

「となると、浦東の金融センターに行って、金融機関巡りでもするか。ディナーも今日は浦東地区の予定だしね」。

その日の晩は正味4日間の上海滞在の中で、唯一あらかじめ予定が決まっていた晩で、上海に居る同僚や社外のコンサルタントの知人に集まって頂いて一緒に中華の円卓を囲むこととなっていたのである。

「やっぱりさあ、今日、これから万博いかない?」。

突然、友人が言い出した。

「だってさあ、今日の晩は皆で食事だろ。今日は何したの?て会話に絶対なるしさあ、その時に銀行行ってましたじゃ、つまらないよ」。

「そうだね。今日はこれから万博へ行こう。よし、今すぐに出よう」。

こうして、上海滞在の二日目の昼から万博へ行く事が決まると、すぐにモーラービラホテルのダイニングを飛び出し、陜西南路(シャンシーナンルー)の通りに出ると、タイミングよく延安中路を右折して曲がって来たバンタイプのタクシーを捕まえることに成功した。

「To Expo, please. The World Expo!」。

タクシーのドアを締めるや否や、すぐさまタクシードライバーに告げたのであった。

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